奨学金と死

奨学金は死ぬと無料になるらしい

→死ぬ確率がどのぐらいあるとオトクに借りられるのかな? という計算

 

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設定

・借りる金 C

・年利(複利) γ (\neq 0)

・1年あたりの返す金 α

 

とすると、

最初の残高 C

1年後の残高 C(1+γ)-α

2年後の残高 (C(1+γ)-α)(1+γ)-α

...

 

となる 奨学金って月ごとに返済で利息の計算も年単位じゃないとか色々あるけどめんどいし大体でいいんで無視します

 

上記の通り、翌年の残高=今年の残高×利率ー返す金 という関係があるので、

 n 年後の残高を a_n とすると、

 

a_{n+1}=a_n(1+γ)-α

という漸化式が得られる

 

特性方程式を解くと、

x=x(1+γ)+α

\displaystyle ⇔x=\frac{α}{γ}

 

すなわち、

\displaystyle a_{n+1}-\frac{α}{γ}=(1+γ)(a_n-\frac{α}{γ})

 

 {\displaystyle a_n-\frac{α}{γ}} は初項 \displaystyle (C-\frac{α}{γ})(1+γ) 、公比 (1+γ)等比数列なので、

\displaystyle a_n-\frac{α}{γ}=(C-\frac{α}{γ})(1+γ)^n

\displaystyle ⇔a_n=(C-\frac{α}{γ})(1+γ)^n+\frac{α}{γ}

を得る

 

 

さて、奨学金はある程度の金額になると20年かけて返す(長い!)らしいので、 a_{20}=0 としよう すると、

\displaystyle 0=(C-\frac{α}{γ})(1+γ)^{20}+\frac{α}{γ}

\displaystyle ⇔α=\frac{γ(1+γ)^{20}}{(1+γ)^{20}-1}C

となり、1年間に返す金が \displaystyle \frac{γ(1+γ)^{20}}{(1+γ)^{20}-1}C であることが分かる

ゴチャゴチャしててウザいので、 \displaystyle Γ=\frac{γ(1+γ)^{20}}{(1+γ)^{20}-1} としておく

 

ここで今後20年間、1年あたりの死ぬ確率を p としよう ここでもジジイになるほど死にやすくなるだろとか色々ツッコミがあると思うが、めんどいので一定とする

 

すると n \leq 20 のとき、 n 年目に死ぬ確率は p(1-p)^{n-1} であり、

このとき C 借りて \displaystyle (n-1)α=ΓC(n-1) 返済しているので、儲かる金は \displaystyle C-ΓC(n-1) である

 

また、21年目以降に生きている確率は (1-p)^{20}  であり、

このときは C 借りて \displaystyle 20α=20ΓC 返済しているので、儲かる金は \displaystyle C-20ΓC である

 

よって利益の期待値は、

\displaystyle E=(C-20ΓC)(1-p)^{20}+\sum_{n=1}^{20}(C-ΓC(n-1))p(1-p)^{n-1}

\displaystyle =(C-20ΓC)(1-p)^{20}+\sum_{n=1}^{20}(C+ΓC)p(1-p)^{n-1}-\sum_{n=1}^{20}ΓCpn(1-p)^{n-1}

\displaystyle =(C-20ΓC)(1-p)^{20}+(C+ΓC)p\sum_{n=1}^{20}(1-p)^{n-1}-ΓCp\sum_{n=1}^{20}n(1-p)^{n-1}

 

ここで、

\displaystyle \sum_{n=1}^{20}(1-p)^{n-1}=\frac{1-(1-p)^{20}}{p}     (A)

である

 

また、

\displaystyle \sum_{n=1}^{20}n(1-p)^{n-1}=(1-p)^0+2(1-p)^1+3(1-p)^2+...+19(1-p)^{18}+20(1-p)^{19}(1-p) 倍すると、

\displaystyle (1-p)\sum_{n=1}^{20}n(1-p)^{n-1}=(1-p)^1+2(1-p)^2+3(1-p)^3+...+19(1-p)^{19}+20(1-p)^{20}

前2式の差を取ると、

\displaystyle p\sum_{n=1}^{20}n(1-p)^{n-1}=( (1-p)^0+(1-p)^1+(1-p)^2+...+(1-p)^{18}+(1-p)^{19})-20(1-p)^{20}

\displaystyle =\frac{1-(1-p)^{20}}{p}-20(1-p)^{20}     (B)

 

(A)と(B)より、

\displaystyle E=(C-20ΓC)(1-p)^{20}+(C+ΓC)(1-(1-p)^{20})-ΓC(\frac{1-(1-p)^{20}}{p}-20(1-p)^{20})

\displaystyle =C+ΓC(1-(1-p)^{20})-ΓC\frac{1-(1-p)^{20}}{p}

\displaystyle =C-\frac{(1-p)(1-(1-p)^{20})}{p}ΓC

を得る

 

期待値が0となるボーダーラインの確率を求めたいので、 E=0 とすると、

\displaystyle 0=C-\frac{(1-p)(1-(1-p)^{20})}{p}ΓC

\displaystyle ⇔ pー (1-p)(1-(1-p)^{20})Γ=0      (C)

となり、求める確率 p は借入額 C によらず利率 γ のみに依存して決まることが分かる

 

\displaystyle Γ=\frac{γ(1+γ)^{20}}{(1+γ)^{20}-1}

において、計算がめんどいので \displaystyle (1+γ)^{20} \simeq 1+20γ+190γ^2 と近似する

なぜこうできるかというと、

\displaystyle (1+γ)^{20}={}_{20}C_0+{}_{20}C_1γ+{}_{20}C_2γ^2+{}_{20}C_3γ^3+...+{}_{20}C_{20}γ^{20}

\displaystyle =1+20γ+\frac{20\times19}{2}γ^2+\frac{20\times19\times18}{6}γ^3+...+γ^n

 

であり、いま γ は利率だから1に比べて小さく、大体3次以降の項はクソ小さいので無視して良いからである

(1次で近似すると単利の計算になってそれだとあんまりなので2次ぐらいにしておきました)

 

すると、上の近似により、

\displaystyle Γ \simeq γ+\frac{1}{20+190γ}

となる

 

同様に、

\displaystyle (1ーp)^{20} \simeq 1-20p+190p^2

なので、これらを(C)に代入し、

\displaystyle p-(1-p)(1-(1-20p+190p^2))(γ+\frac{1}{20+190γ}) \simeq 0 

\displaystyle ⇔ 1-(1-p)(20-190p)(γ+\frac{1}{20+190γ}) \simeq 0 

 

となり、 p2次方程式が得られる

奨学金は常に利率が変わるが、試しに固定で年利1%としてみよう

γ=0.01 を代入すると、

  

\displaystyle 1-0.05566(1-p)(20-190p) \simeq 0 

\displaystyle ⇔ 1-0.05566(1-p)(20-190p) \simeq 0 

\displaystyle ⇔ 105754p^2-116886p+11820 \simeq 0 

\displaystyle ⇔ p \simeq 11.26%

 

すなわち、 1-(1-p)^{20} \simeq 0.9083

 

今後20年間で死ぬ確率が90.83%以上なら借りたほうがオトク、ということになる

(単純に金額だけの意味で)

 

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追記 奨学金を借りてから返済が始まるまでの期間の存在を忘れていました(完)